土曜の午後、ニュースを漁りながら来週を読む
今は土曜日の午後16時。昨日の米国市場(NY)は祝日のため休場でした。今朝確認した日経先物も動意薄、為替も1ドル159円65銭とこれといった方向感なし。来週に向けた材料を整理しようと、ニュースフィードを漁っています。
今週の2大テーマはこの2つです。ひとつは3月の米雇用統計、もうひとつは開戦5週目に突入した米・イスラエルによる対イラン軍事作戦の激化です。どちらも来週の相場を左右しかねない材料です。順番に整理していきます。
3月の米雇用統計:表面は好数字、中身は玉虫色
米労働省が4月3日に発表した3月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が17万8,000人増と、過去15カ月で最多の増加となりました。市場予想(ロイター調査)の6万人増を大幅に上回り、数字だけ見れば文句なしの好結果です。
失業率も前月の4.4%から4.3%へと改善しています。ただ、これは額面通りには受け取れません。
数字の裏に潜む「見えない弱さ」
今回の雇用増の大部分は、医療従事者のストライキ終結による一時的な職場復帰(約3万5,000人)と、春先の気温上昇による建設業の押し上げ効果(2万6,000人増)によるものです。パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミストも「雇用者数は一時的な要因で増加したに過ぎず、トレンドは依然として弱い」と釘を刺しています。
失業率の低下も、実態は労働参加率の低下(61.9%、約4年半ぶりに62%を下回る)が主因。移民流入の減少や労働人口の高齢化が背景にあり、参加率が維持されていれば失業率は4.5%まで上昇していたとのエコノミスト推計もあります。
平均労働時間は34.3時間→34.2時間へと短縮、賃金の前年比の伸びも3.8%→3.5%へと鈍化。企業はレイオフに踏み切る前にまず労働時間を削るのが常です。シグナルとして軽視はできません。
また、AI導入の影響とも見られるコンピューター・システム設計関連ポジションが約1万3,200人減少。製造業の工場雇用者数も2025年1月以降で8万2,000人が失われたままです。連邦政府雇用も2024年10月のピーク以来、累計35万5,000人減少しています。
FRBへの影響:「様子見」がほぼ確定
フィッチ・レーティングスの米国経済担当は「FRBにとって現時点では様子見が唯一の賢明な選択肢」と明言しており、年内の利下げ期待は大幅に後退しています。
今週の全米平均ガソリン価格が3年以上ぶりに1ガロン4ドルを突破したことも無視できません。インフレ再燃・購買力低下・消費鈍化という悪循環が現実味を帯びています。対イラン戦争によるサプライチェーン混乱の影響が経済全体にまだ完全には浸透しておらず、その影響が数字に出てくるのはこれからです。
中東情勢:開戦5週目、一進一退の泥沼へ
2月28日に米・イスラエルが開始した対イラン軍事作戦は、今週でちょうど5週目に突入しました。当初、米国防総省は「4〜6週間で完了」との見通しを示しており、トランプ大統領も3月31日に「2〜3週間以内に撤退する」と発言。市場はそれを材料に一時楽観ムードになりかけていました。
しかし現実は甘くありません。
戦況は一進一退——米軍機撃墜という衝撃
4月3日、イラン上空で米軍のF-15E戦闘機とA-10攻撃機の計2機が被撃・墜落し、乗員の捜索・救助活動が続いています。捜索に向かったブラックホーク2機も被撃し退避を余儀なくされました。今次作戦で初めて確認された撃墜事案であり、イランの反撃能力がいまだ健在であることを改めて示しました。
イランは停戦提案(48時間)を拒否。ペルシャ湾岸のアラブ諸国のエネルギー施設への攻撃も一段と拡大しており、UAE・ドバイではオラクルの施設に迎撃破片が落下し外壁が損傷するという事態も起きています。イランの革命防衛隊(IRGC)は米企業18社を標的リストに挙げており、オラクルはその中に含まれています。
ニューズウィーク日本版(4月3日付)では、「イスラエル・アメリカとも、どうやら力の限界に達しているらしい」と元外交官のコラムニストが指摘。湾岸地域の米軍レーダーが攻撃を受け、空域管制能力を失ったとの報道も相次いでいます。
フーシ派参戦でさらに拡大の恐れ
さらにイエメンの親イラン武装組織フーシ派が戦闘に加わったことで、戦争が2カ月目に入ってさらに拡大する懸念が高まっています。パキスタン、エジプト、サウジアラビア、トルコが打開策を探るべく協議を行っているものの、停戦への道筋はまだ見えません。
ホルムズ海峡問題と日本への影響
日本にとっても対岸の火事ではありません。石油輸入の生命線であるホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く中、エネルギーコストの上昇圧力は長期化する懸念があります。円安・資源高のダブルパンチが企業業績を下押しするリスクは、引き続き頭に入れておかなければなりません。
来週の相場展望:慎重ながら冷静に
NY休場明けとなる来週、市場が最初に織り込もうとするのはこの5週間の戦況の変化と雇用統計への評価です。以下の点を軸に動向を見極めていきます。
- 米国株の動向(NY休場明け後の反応)
- 中東情勢の続報(停戦交渉の進展 or さらなる激化)
- 為替(ドル円160円の節目を突破するかどうか)
- 米国長期金利の動向(FRB利下げ期待後退の継続)
- 原油・エネルギー価格(ホルムズ海峡封鎖の長期化リスク)
雇用統計の表面的なプラスで楽観ムードに乗るのは早計です。トランプ大統領が「任務完了は近い」と言えば言うほど、現場では戦闘機が撃墜されている——そのギャップを相場は必ず値踏みしてきます。規律を持ったポジション管理こそが、今この局面での最大の武器です。
土曜の午後、コーヒー片手にニュースを読み込んでいると、なんとも複雑な気持ちになります。雇用統計の見出しは「15カ月ぶり最多」。でも中身を読めば、ストライキ終結の反動と春の気温が上がっただけの話。本当の経済体力が戻ったかどうかは、来月以降を見なければわかりません。
それより気になるのは、やはり戦況です。「2〜3週間で撤退」とトランプ大統領が言った翌々日に、F-15が撃墜されている。言葉と現実のギャップがこれほど大きいと、さすがに市場も戸惑うはずです。ドバイのオラクル施設に迎撃破片が落ちる時代——地政学リスクは今や、ポートフォリオに直結する話になりました。
それでも嘆いていても仕方ない。来週も規律をもってポジションを守り、チャンスがあれば拾う。それだけです。勝てば官軍——まず生き残ることが先決です。