- 嵐の予感——週明けの相場を前に、深呼吸している
- なぜ米国株は崩れたのか——「強すぎる雇用」という皮肉
- もう一つの火種——米・イランの軍事衝突激化
- 週明けの日本株——どこを見るべきか
- 現在の保有銘柄と評価損益(参考:直近確定値)
- 端くれ投資家の週明け戦略——動かないことも、戦略である
- 原油160ドルシナリオが現実になるとき
- 嵐の前夜に、端くれ投資家は何を思うか
嵐の予感——週明けの相場を前に、深呼吸している
今日は日曜日。市場は動いていない。それなのに、スマートフォンを開くたびに胃がキュッとくる感覚がある。それが個人投資家というものだと、15年超の経験を経てもなお思い知らされます。
米国時間6月5日(金)夜、相場は大きく崩れました。ナスダック総合指数は-4.18%、S&P500は-2.64%、ダウは-1.35%。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)に至っては、新型コロナのパンデミック初期(2020年3月)以来最大の下落率を記録し、時価総額にして1兆ドル超が一日で消えました。
そして日経225先物は、この原稿を書いている時点で63,820円、前日比-2,850円(-4.27%)という数字を示しています。週末の終値66,588円から、先物だけで4%超の下落。週明けの日本市場は、相当な覚悟が必要な寄り付きを迎えることになりそうです。
なぜ米国株は崩れたのか——「強すぎる雇用」という皮肉
今回の急落の引き金を引いたのは、5月の米雇用統計でした。非農業部門雇用者数は172,000人増と、ロイターまとめのエコノミスト予想(85,000人増)をダブルスコア以上で上回りました。
「雇用が増えているのになぜ株が下がるのか」——投資を始めたばかりの方には不思議に映るかもしれません。しかし今の市場においては、「景気が強い=FRBが利下げできない(むしろ利上げ)」という連想が先に立ちます。CMEフェドウォッチによれば、金融市場はFRBが12月会合で利上げに踏み切る確率を42.7%と織り込み始めています。
過去数週間にわたって記録的な上昇を続けてきたハイテク・半導体銘柄群が、一斉に利益確定の売りに晒された。それが今回の急落の正体です。ファンダメンタルズの悪化ではなく、ポジション調整と金利観の転換——そう整理することはできます。しかし、だからといって明日の日本株が穏やかな寄り付きを迎えるわけではありません。
もう一つの火種——米・イランの軍事衝突激化
市場が揺れているもう一つの理由が、中東情勢の急速な悪化です。
米軍は6日、ホルムズ海峡に向けて発射されたイランのドローン4機を撃墜し、イラン沿岸のレーダー施設を攻撃したと発表しました。これに対してイランのイスラム革命防衛隊は、地域の米軍基地をミサイルで攻撃し、さらにホルムズ海峡を通過しようとしたタンカー4隻を砲撃したと発表。クウェートやバーレーンにも緊張が波及し、サイレンが鳴り避難が呼びかけられる事態となっています。
原油の輸送ルートとして世界の海上原油輸送量の約20%が通過するホルムズ海峡。その封鎖が長引く中、世界の原油在庫は3〜4月で計2億4,600万バレルという「記録的なペース」で取り崩されてきました。米石油大手エクソンモービルの幹部は「1バレル=160ドルへの急騰が2〜3週間後に起き得る」と警鐘を鳴らしており、シェブロンのCEOも「数週間で圧力が価格に波及する」と見通しを示しています。
原油高は輸送コスト・製造コスト・光熱費を通じて企業収益を圧迫します。エネルギーコスト上昇は、FRBの利下げをさらに遠ざける方向にも働きます。雇用統計と中東情勢、この二つが同時に株式市場の重石となっている構図です。
週明けの日本株——どこを見るべきか
日経先物-4.27%という数字が示す通り、週明けの寄り付きは相当な下押しが予想されます。前回の記事で確認した日経平均66,588円から先物ベースで約2,800円下落するとすれば、64,000円を割り込む場面も覚悟しておくべきかもしれません。
ただし、いくつかの視点から整理したいと思います。
①半導体・ハイテク銘柄への影響
今回の米株急落はナスダックと半導体株が震源地でした。東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコといった半導体関連銘柄が日経平均の下落を主導する可能性が高く、指数の寄与度という意味では数字以上の下押しになる場面も想定されます。一方で「過度に買われた銘柄が調整しただけ」という見方もあり、売り一巡後のリバウンドに注目する投資家もいます。
②為替の動向——160円台のドル円が示すもの
ドル円は160円台前半で推移しています。強い雇用統計を受けた日米金利差拡大観測でドル買いが入る一方、財務省による円安是正への警戒感も漂っています。円安は輸出企業にはプラスに働く半面、エネルギーや食料品コストの上昇を通じて内需企業やコスト増に敏感な業種には逆風となります。160円台が継続するかどうかは、日銀の動向次第という面もあります。
③原油高と関連セクター
WTI原油先物は90.25ドル。ホルムズ海峡情勢が緊迫化する中、石油関連株・海洋資源関連株には引き続き注目が集まります。一方で、原油高は航空・物流・化学など幅広い業種のコスト増に直結するため、「原油高恩恵株」と「原油高被害株」の選別が一層重要になってきます。
④VIX指数の急上昇——39%増という異常値
恐怖指数と呼ばれるVIX指数は21.51と、一日で+39.67%急騰しています。20を超えてくると市場参加者の不安が高まっているサインとされ、短期的なボラティリティの増大が予想されます。こういう局面では、焦って動くことが最も損失を拡大させます。端くれ投資家が15年超で学んだ教訓の一つは、「VIXが跳ね上がっている時に売った後悔は、買った後悔より深い」ということです。
現在の保有銘柄と評価損益(参考:直近確定値)
今日は休日のため、直近取引日(6月5日)の確定値を参考として掲載します。週明けの市場次第でこの数字は大きく動くことが予想されます。
評価損益合計:-6,600円(-0.09%)
先物の動きをそのまま当てはめると、週明けはこの数字が一気に動く可能性があります。三井海洋開発のような資源関連は原油高で底堅い展開も期待できますが、その他の銘柄は全体の下押しに引きずられる場面もあるでしょう。心の準備だけは、今日のうちにしておきます。
端くれ投資家の週明け戦略——動かないことも、戦略である
こういう局面で問われるのは、「何をするか」よりも「何をしないか」だと思っています。
VIXが40%近く跳ね上がり、日経先物が4%超下げている週明け寄り付きで焦って全部売るのか。あるいは、こういう時こそ買い増しの好機と見るのか。15年超の投資経験の中で、暴落局面での焦りが取り返しのつかない損失につながった経験は一度や二度ではありません。
端くれ投資家のスタンスはシンプルです。損切りラインを決めて、そこに到達していない銘柄は動じない。保有銘柄のうち、損切りラインに近づいているものは現時点ではありません。であれば、週明けの嵐を、シートベルトを締めて座ったままやり過ごすのが規律というものです。
ただし、三井海洋開発については注目しています。原油価格の急騰シナリオが現実のものとなれば、海洋資源開発という事業特性がさらに評価される場面が来るかもしれない。逆に、地政学リスクのショック安で一時的に下げる場面があれば、それは中長期の目線では面白い局面になり得ます。売るつもりはなく、むしろ動向を注視しています。
原油160ドルシナリオが現実になるとき
エクソンモービルの幹部が「2〜3週間後」と警鐘を鳴らしたWTI原油160ドルシナリオ。これが現実になった場合、日本経済への影響は相当なものになります。
貿易赤字の拡大、円安圧力の再燃、エネルギーコスト増による企業収益の圧迫——これらは株式市場全体への逆風となります。一方で、原油関連・海洋開発・商社・メガバンク(金利上昇局面での恩恵)といったセクターには資金が向かう可能性があります。
手放しに悲観するのではなく、「どのセクターに風が吹くか」を冷静に見極める。それが、嵐の中でも航海を続けるための羅針盤です。
嵐の前夜に、端くれ投資家は何を思うか
日経先物が-4.27%という数字を見ながら、正直に言えば、胃が重い。三井海洋開発が先週の上昇分を全部吐き出す展開になるのか。NTTやJR東海はさらに含み損を広げるのか。電力株はどうなるのか。日曜日にあれこれ考えても、答えはどこにもありません。
それでも、「規律を守る」という一点だけは決めています。損切りラインは決めた。そこに到達していない限り、焦って動かない。暴落の中で売った後悔は、暴落の中で買った後悔より、長く、深く、尾を引くと知っているから。
米国株が半導体を中心に崩れ、イランとの軍事衝突が激化し、数週間で価格への圧力が波及し始めるかもしれない——そんな情報が飛び交う週末に、個人投資家ができることは限られています。嵐を予報することはできても、嵐を止めることはできない。だから、帆を畳んで錨を下ろして、やり過ごすだけです。
それでも航海図は破り捨てていない。2,000万への道は、こういう嵐の夜を何度もくぐり抜けた先にある。15年超の投資人生が、そう教えてくれています。週明け、何があっても、規律だけは手放さない。